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町のとっておきの場所 横須賀・湘南国際村「海のギャラリー」
2026.08.05 水
町のとっておきの場所
Hachiがご紹介する、町のとっておき…。
横須賀・湘南国際村には、大人から子どもまで幅広い世代に親しまれる「海のギャラリー」があります。
海の記憶を木に刻む 海洋彫刻家・神山豊さんが、作品を通して海の魅力や自然の大切さを伝えています。
いつも優しい笑顔の神山豊さん

「ずっと海が好きだった」
海洋彫刻家・神山豊さんの原点は、幼い頃から親しんできた海にあります。
横浜市旭区で生まれ育った神山さんは、子どもの頃から電車とバスを乗り継ぎ、
長者ヶ崎や走水へ海遊びに出かけていました。
貸しボートで釣りを楽しみ、漁港では地元の漁師から「あんちゃん」と声をかけられ、頼みごとをされるほど。
まるで地元の子どもと間違われるほど、海と自然に馴染んだ少年時代を過ごしました。
現在も保育園で美術を教えるなど、地域とのつながりを大切にしながら活動を続けています。
学生時代はスポーツに打ち込み、中学では水泳や陸上で活躍、高校では全国高校駅伝にも出場しました。
しかし、足の故障をきっかけに競技の道を離れ、大学ではアメリカンフットボールへ転向。
その後、「一生かけて探求できるものは何か」と自分自身と向き合い、幼い頃から興味を持っていた音楽や美術など、
芸術の道へ進むことを決意しました。横浜の美術研究所で7年間学び、油絵や銅版画を中心に制作活動を行いました。
『海のギャラリー』は、入る前からワクワクする場所

1981年、神山さんは念願だった海の近く、秋谷へ移住します。
十分な制作スペースがなかったため、自ら設計図を描き、2年かけてアトリエを増築。
そこから建築図面を描くことにも興味を持ち、秋谷の自宅では庭に2棟の小屋を自ら設計し建築しました。
現在の制作でも、まずデッサンを描き、その後、正確な図面を作成してから制作に入ります。図面の引き方も独学。
頭の中にあるイメージを正確に形にするため、建築的な視点を作品づくりに取り入れています。
2019年には湘南国際村へ移住し、アトリエを構え、2022年には「海のギャラリー」をオープンしました。
神山さんが彫刻へ本格的に向き合うきっかけは、絵画制作をする中で
「すべての角度から見ても美しい対象を表現したい!」
という思いが生まれてきました。
藤沢市で彫刻家・菅沼五郎氏が指導していた「湘南美術研究会」に参加。
人体トルソー制作に取り組む中で、「力強いもの」「生命力を感じるもの」を表現したいという思いが明確になっていきました。
子どもたちのお気に入り。
のびのび遊べるアトリエの広いお庭

2000年頃から彫刻作品が増え、2011年には動く海洋彫刻「OCEANS」シリーズの制作を開始。
当初は粘土を使った制作でしたが、2012年、「すべて木で作ろう!!」と決意します。
木の肌触り、香り、温もり。
椅子やテーブルを制作していた経験や、自宅の暖炉で使っていた薪から得た発想、大木をチェーンソーで加工してきた経験。
これまで積み重ねてきた好きなことや経験が、すべて木彫作品へとつながっていきました。
木から生まれた、今にも動き出しそうなザトウクジラ

神山さんの創作活動の大きな原点となった出来事があります。
約30年前、秋谷海岸に一頭のマッコウクジラが打ち上げられました。
魚が腐ったような強烈なにおいが漂う中、神山さんはその巨大な姿に近づきました。
目の前に現れたのは、これまで想像したこともないほど大きな生命体。
「こんなに大きな生き物が、地球上に存在するのか」
その驚きと感動は、単なる興味ではなく、海や生命について深く考えるきっかけとなりました。
何度も色を重ね、丁寧に仕上げられたクジラの美しい肌

なぜこの生き物はここにたどり着いたのか。
その時に感じた思いが、現在の海洋彫刻へと続く原点となっています。
25年前からクジラのマケット制作を始め、「いつか大きな作品をつくりたい」という思いを抱き続けてきました。
代表作品であるマッコウクジラやザトウクジラには、海の中に存在する生命の大きさ、多様性、
そして地球の豊かさへの想いが込められています。
さらに、深海に生きるチョウチンアンコウの制作にも挑戦。
「自分が潜って見ることのできる海には限りがある。
まだ知られていない海の世界を知ってほしい」
そんな願いを作品に込めています。
神山さんの作品の大きな特徴は、実際に動くことです。
生き物への想いから生まれる、一つひとつ違うハンドル

「作品を動かすことで完成する」
それが、神山さんが生み出した“動く木の彫刻”です。
元気に泳ぐ海の生きものの姿を、彫刻で表現したかった。
作品には木製の歯車が組み込まれており、ハンドルを回すことで生きものが動き出します。
自らの手で動かすことで、鑑賞者は作品をただ見るだけではなく、生命の動きとアート作品を体感することが出来るのです。
歯車や台座もすべて作品ごとに設計し、一体一体、生きものの形や動きに合わせて制作。
海の生きものを制作するようになってから、神山さんは地球環境についても深く考えるようになりました。
道端に落ちているごみは、やがて川を通じて海へ流れ着きます。
日々の暮らしの中で自然素材を取り入れること。海洋プラスチック問題を意識すること。
ケミカルな物質が海へ流れ込まないよう、一人ひとりが考えること。
子どもも大人も笑顔になれる、居心地のよい空間

その小さな変化が未来の海を守る力になると考えています。
幼い頃、海には海藻があることが当たり前でした。
しかし15年ほど前から海藻が減少し、10年ぶりに潜った海では岩場から海藻が全く消えていることに、大きな衝撃を受けました。
遠くから眺めるだけではわからない海の変化。
実際に海へ潜ることで初めて見える現実があります。
神山さんは、少しでも豊かな海を未来へ残したいという願いを込め、3年ほど前から作品に海藻を取り付ける表現を始めました。
これからも、この取り組みを積極的に続けていくつもりです。
豊かな生命の未来を、次の世代へ

先日、静岡県富士宮市にある喫茶店を改装したギャラリーで展示を行いました。
かつて肉店だった建物の大きな冷蔵庫スペースを活用し、青い照明で海の中をイメージした展示。
そこで感じたのは、海と山の深いつながりでした。
富士山の麓に広がる豊かな自然。
山に育まれた水が川となり、海へ流れ、豊かな駿河湾をつくる。
「海だけではなく、山や森も含めて、すべてがつながっている」
神山さんの作品が伝えるのは、海の美しさだけではありません。
生命が輝きながら存在する世界。
そして、その豊かな未来を次の世代へつなげていくためのメッセージなのです。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただきありがとうございました。
















DATA
「海のギャラリー」
神奈川県横須賀市湘南国際村1丁目1−7
Instagram
最後までお読みいただきありがとうございました。
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