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町のとっておきの場所 横須賀・長坂「チキチータファーム」

2026.10.14 水

町のとっておきの場所
Hachiがご紹介する、町のとっておき…。



三浦半島最高峰・大楠山の麓、横須賀市長坂。海を望む丘の上に、放牧養鶏場「チキチータファーム」があります。

「捨てられる食物残渣をエサに活用。配合飼料・薬剤不使用。トリもヒトも、地球もハッピー」
そんな想いを掲げ、自然の中で鶏を育て、

地域と環境が循環する養鶏を実践しているのが、鈴木章子さんです。

鈴木さんの歩んできた道は、一般的な農家とは大きく異なります。もともとは作業療法士として医療現場に勤務。

その後、青年海外協力隊として南米ボリビアへ渡り、さらにNGO職員としてカンボジアに駐在し、精神保健医療の分野で活動しました。

帰国後は14年間、作業療法士養成校の教員として後進の育成にも携わりました。

30代に入って、自然・環境に興味を持ち、農業への道を歩み始めました。実家の養鶏場で働く中で、ケージの中で飼育される鶏たちの姿に違和感を覚えます。

「鶏をケージの中で飼うことはしたくない」

そう考え、平飼いへの転換を模索しました。しかし、50年間続いてきた養鶏方法を変えることは簡単ではありませんでした。

「前向きな挑戦というより、自分でやるしかないという切迫感でした」

その覚悟から、2020年6月、チキチータファームを立ち上げました。



一羽の鶏との出会いから生まれた名前

ファームの名前の由来は、一羽の傷ついた鶏との出会いでした。

ケージの中で傷つき、弱っていた鶏を保護した時、鈴木さんの心に浮かんだのが、ABBAの楽曲「Chiquitita(チキチータ)」でした。

傷ついた人に寄り添い、励ます歌。その歌詞が、閉じ込められていた鶏の姿や、過去の自分自身の経験と重なりました。

鈴木さん自身も、子どもの頃につらい経験をし、苦しい現実から自分を守るために心を切り離すような感覚を抱いたことがあったといいます。

だからこそ、逃げ場のない環境に置かれた鶏の苦しみに深く寄り添うことができました。


医療や海外経験がつながった農場づくり

高校生の頃、部活動の後輩がケガをし、リハビリで理学療法を受けていたことが、この道を志すきっかけになりました。

身体の回復だけでなく、心にも寄り添いながら支える仕事があることを知り、作業療法士を目指すようになり、精神科領域での経験や、カンボジアでの活動経験も、現在の農場づくりにつながっています。

カンボジアでは、統合失調症の患者さんと関わる中で、都市部より農村部のほうが回復が早いケースがあることに気づきました。

自然との関わり、人とのつながり、地域の中で暮らすことが心の健康に影響しているのではないか。

その経験が現在の「命が命らしく生きられる環境づくり」につながっています。


地域資源を卵へ変える循環型養鶏

チキチータファームの大きな特徴は、地域資源を活用した循環型の養鶏です。

飲食店などから出る食品残渣を活用し、お米、おから、ビールかす、出汁ガラ、ぬか、くず野菜、雑草などを餌として利用しています。

鈴木さん自身が鶏の健康状態を見ながら餌を配合し、添加物に頼らず、鶏が本来持つ生命力を引き出すことを大切にしています。

「地域からエサの原料をいただき、卵にして地域へ返す」

それが鈴木さんの目指す循環の形です。

現在は14カ所の事業所と協力し、食品ロス削減や焼却ごみの削減にもつなげています。

また、チキチータの卵は一つとして同じ色ではありません。

かぼちゃを多く食べた鶏の黄身はオレンジ色に、草をよく食べた鶏の黄身は鮮やかなレモンイエローに。

鶏自身が何を食べるかを選ぶ自由があるからこそ、卵にもそれぞれの個性が表れます。

鈴木さんの言う、

「みんな違ってみんないい」
という考え方は、卵にも、鶏にも
そして人にも通じています。


庭先養鶏で暮らしの中にも循環を

鈴木さんは、家庭で少数の鶏を育てる「庭先養鶏」の普及にも力を入れています。

庭先養鶏は、新鮮な卵を得るだけでなく、生ゴミや残飯を鶏が食べ、鶏糞を家庭菜園に活用するなど、暮らしの中に小さな循環を生み出す取り組みです。

「トリは、暮らしの中に循環をつくってくれる存在」

鈴木さんはそう考えています。

チキチータファームでは、養鶏を仕事として始めたい人向け、すでに飼育している人向け、初心者向けなど、段階に合わせた勉強会も開催しています。



「平飼い」に込めた一番大切な想い

鈴木さんが取材の中で何度も強調していたのは、「平飼いを大切にする」ということでした。

地域循環や食品ロス削減、環境への配慮など、多くの取り組みを行っていますが、その根底にあるのは、

「鶏が鶏らしく生きられる環境をつくること」です。

これは世界的に広がる動物福祉(アニマルウェルフェア)の考え方とも重なります。

動物の身体的・精神的な状態を尊重し、より良い生活環境を整えることは、動物だけでなく、そこで働く人や消費者にもつながる取り組みです。



新たな挑戦「チキチータたまごスタンド」

一方で、養鶏だけでは経営面での課題もありました。

卵は一日に多く採れて約100個。卵だけでは売上に限界があり、経費を考えると事業として継続していく難しさがありました。

そこで、葉山商工会の中小企業診断士・増田さんへの相談をきっかけに、新たな取り組みとしてキッチンカー事業を始めることになりました。

「卵を料理にすることで、卵の価値を広げる」という発想から誕生したのが、

「チキチータたまごスタンド(通称:たまスタ)」です。

中華・フレンチの経験を持つシェフとともに、しらす卵丼、卵焼き弁当、卵サンド、フレンチトーストなど、産みたて卵を活かした料理を提供します。基本はテイクアウトですが、ファーム内にはその場で食事を楽しめるスペースも設け、訪れた人がゆっくり過ごせる場所づくりを目指しています。




チキチータファームが目指しているのは、単に卵を生産する場所ではありません。

卵を産む鶏。
鶏を育てる人。
卵を選び、食べる人。
地域や自然。

そのすべてが無理なく共存し、誰か一つだけが負担を背負わない仕組みをつくること。

「自由があるから違いがある。それが自然なこと」

鈴木さんのこの言葉が示すように、チキチータファームでは、一羽一羽の鶏が自分らしく、生き生きと過ごしています。

そこには、競争ではなく共生があります。

命を大切にすること。
地域の資源を循環させること。
人も無理なく関わり続けられること。

チキチータファームは、誰かの犠牲の上ではなく、すべての命が心地よく暮らせる未来を育てています。


「トリもヒトもハッピー」

その想いは、丘の上の小さな養鶏場から、地域へ、そして未来へ広がっています。

「自由があるから違いがある。それが自然なこと」

鈴木さんのこの言葉が示すように、チキチータファームでは、一羽一羽の鶏が自分らしく、生き生きと過ごしています。

そこにあるのは、同じものを求めるのではなく、それぞれの個性を認め合うという考え方です。

鶏も、人も、自然も、それぞれ違うからこそ価値がある。

命を大切にすること。
地域の資源を循環させること。
人も無理なく関わり続けられること。

チキチータファームは、誰か一つの存在が我慢するのではなく、すべての命が心地よく共存できる未来を育てています。

「トリもヒトもハッピー」

その想いは、丘の上の小さな養鶏場から、地域へ、そして未来へ広がっています。





お忙しい中、取材・撮影にご協力いただきありがとうございました。

    





DATA
「チキチータファーム」
神奈川県横須賀市長坂4丁目20−1


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最後までお読みいただきありがとうございました。

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