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町のとっておきの場所 横須賀・衣笠「いづみや」

2026.06.10 水


町のとっておきの場所
Hachiがご紹介する、町のとっておき…。

横須賀・衣笠商店街に、長く愛され続ける和菓子店があります。
創業70年以上の老舗和菓子司「いづみや」。


その現場を支えるのは、工場長であり和菓子職人の山崎加奈さん。
受け継がれてきた味を守りながら、日々まっすぐに和菓子と向き合っています。

山崎さんは埼玉県東秩父村の出身。高校卒業後、横浜の製菓専門学校で学び、念願だったパティシエとして洋菓子店に就職しました。
しかし、現場は想像以上に厳しく、心身ともに追い込まれる日々が続きます。
そんな中、ふと学生時代に感じた和菓子作りの楽しさがよみがえりました。

そこで専門学校に相談し、紹介されたのが、現在勤めている「いづみや」でした。
もともとX JAPANのHIDEのファンで、横須賀に住む友人を訪ねてどぶ板通りを訪れたことがあったといいます。
その縁もあり、現在は横須賀での生活も13年目。夏は涼しく冬は暖かい、暮らしやすい土地だと感じているそうです。


どこか懐かしい雰囲気のある横須賀・衣笠



本社と工場を構える衣笠商店街は、新旧さまざまなお店が並び、どこか懐かしさを感じさせる場所です。
地域イベントも多く、人の温かさと活気にあふれています。
「もっと商店街を盛り上げたい」——そんな思いを胸に、日々働いています。

昨年は米価の高騰により、売り上げが大きく落ち込むという試練に直面しました。
そこで、以前からやってみたいと考えていた餅つき大会を「今こそやるしかない」と決意し、年末に開催。
杵は実家から譲り受け、臼は会社にあるものを使用しました。
商店街全体を巻き込み、多くの人が参加する賑やかなイベントとなり、この経験から
「何かを成し遂げるには人の力が不可欠だ」と実感したといいます。

一見、日本の伝統文化に深く親しんできたように見える山崎さんですが、ご両親はクリスチャン。
和菓子作りに携わる中で、寺社や年中行事について改めて学んできました。
「和菓子は日本の行事と深く関わっている。季節ごとに学びがあり、ご先祖さまがいて自分がいることを実感します」と語ります。


もっと衣笠商店街を盛り上げていきたいと語る山崎さん



幼い頃から祖母が和菓子好きで、母とともに和菓子屋へ通う日常がありました。
祖母の作る大きなおはぎは、今でも忘れられない思い出です。
母が土手でヨモギを摘んで作る草団子など、手作りの味にも親しんできました。

自然の中で山を駆け回って遊んだ幼少期の記憶——その原風景が、現在の和菓子作りの原点となっています。
山崎さんの作品には、そうした季節の移ろいが映し出されています。
特に印象的だったのは、「4月から5月の新緑の季節が好き。本物の楓が本当にきれいだった」という言葉です。
また、東北で見た田んぼの青々とした風景も、鮮明に記憶に残っているといいます。


せっかく日本に生まれたのだから、和菓子の魅力を知り、ぜひ味わってほしい——そんな思いが込められています。



そんな山崎さんも20代の頃は、うまくいかないことも多く、悩んでいたそうです。
当時のことを語ってくださいました。
入社1年後には、年上のパートスタッフに指示を出す立場に。
しかし、自身も分からないことだらけで、代表に教えを請う日々が続きました。
20代は常に仕事に追われ、余裕がなく、苛立ちが周囲にも伝わっていたと振り返ります。
工場にこもる毎日で、お客様と直接関わる機会もなく、「本当に美味しいのだろうか」と不安を抱えながら作り続けていました。
お店のスタッフから「お客様が美味しかったと言っていましたよ」と伝えられても、なかなか実感を持てなかったといいます。

そんなある日、作業中に機械に指を挟み、切断する大けがを負います。1か月の休養。
その時間が、自分を見つめ直すきっかけとなりました。
ちょうどWBCで大谷翔平選手が活躍していた時期でもあり、そこから野球観戦に興味を持ち、やがてドアラのファンに。
観戦を通して仲間もでき、人生に楽しみが増えました。

一方で、「もう和菓子を作れなくなるかもしれない」という不安にも直面します。
その経験から、「何でも詰め込めばいいわけではない。心に余裕を持つことが大切だ」と気づきました。
現在、「いづみや」の代表的な商品であるかりんとうまんじゅうは、全国的にも知られる存在となりました。
しかし山崎さんは、「地元に愛される店」であることを何より大切にしています。
「まずは身近な人に喜んでもらい、愛されること。その積み重ねがあってこそ、世間にも受け入れられるのだと思います」


まずは身近な人へ届けたい



ぜんざいの店頭販売や実演販売、工場前での販売など、新たな取り組みにも積極的に挑戦しています。
また、定番商品についても「より美味しく食べていただきたい」という思いから、味の改良やレシピの見直しを重ねています。

さらに、お客様からのメッセージを掲示する試みでは、子どもたちからも多くの温かい言葉が寄せられました。
「『いづみやのお菓子が大好きです』——その言葉以上に嬉しいものはありません」
ここ2、3年ほどで少しずつ余裕が生まれ、ようやく外に目を向けられるようになったといいます。

和菓子作りのワークショップも開始し、参加者との交流の楽しさを実感。
「作り手がどんな人か知ってもらうことが大切」と話します。かつてパティシエを目指した原点——


「美味しいと言ってもらいたい」という気持ち。その大切さを改めて思い出しました。



「結局、そこを忘れていたんです」日々をこなすことで精一杯だった時期を経て、今は「美味しい」と言ってもらえることが何よりの喜びだといいます。まずは身近な人に愛されること。その積み重ねが、やがて世の中へ広がっていくと考えています。

代表の三堀さんが人前に立つことを得意とする一方で、山崎さんはどちらかというと裏方タイプ。
人前でのデモンストレーションでは手が震えることもあるそうですが、「たまにはそういう挑戦もしていきたい」と前向きです。
今後の目標は、日本の行事に和菓子をもっと取り入れてもらうこと。
ひな祭りや子どもの日など、「ケーキではなく和菓子を選んでもらえるようにしたい」と語ります。
季節の和菓子を次の世代へつなげていくこと——それが使命だと感じています。
「給食に和菓子が出るようになったら理想ですね」と笑います。

思わず笑みがこぼれる『にこにこぷん』のじゃじゃまる・ぴっころ・ぽろり



「職人とは何か」という問いに対して、山崎さんはこう答えます。

職人とは、お客様が喜んでくれるものをつくり続け、それを追求していく存在だと思います。
そこにゴールはありません。より良いものを目指して試行錯誤を重ね、こつこつと積み上げながら、
自分自身と向き合い続けていくことが大切だと感じています。


情報があふれている今の時代は、少し触れただけで“できたつもり”になってしまうこともあると思います。
だからこそ、自分に問いを持ち続けながら、真摯に取り組んでいきたいです。


特注で製作された、和菓子づくりのための手仕事用道具。



お菓子を販売する中で、『こんなに高いのか』と言われることもあれば、『良いお茶の時間になる』と言っていただけることもあります。
その価格に見合う価値をきちんと届けられているのか。
お客様に“買ってよかった”と思っていただけなければ意味がない——常にそう自分に問いかけています。



こうして振り返ったとき、「成長している自分がいることが嬉しい」と語ります。
続けてきたことには意味があった。

「職人として、日本人として守っていくべきものがある」——その言葉には、揺るぎない覚悟がにじんでいました。





お忙しい中、取材・撮影にご協力いただきありがとうございました。

    







DATA
いづみや衣笠本店
神奈川県横須賀市衣笠栄町1-70 衣笠仲通り商店街
(アーケード内/中央付近)

TEL:046-853-9620
営業時間:10:00~17:00

HP

Instagram (和菓子司いづみや) 

Instagram (山崎さん)








最後までお読みいただきありがとうございました。

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